よくある質問
Q.相続財産管理人とは?
全相続人が相続放棄をするなどして、相続人がいない場合など、相続人不存在制度では、相続財産管理人が選任されることがあります。
この管理人が、相続財産を管理することになるわけです。
相続人財産管理人の選任申立ができる人
相続財産管理人を選任するよう請求できるのは利害関係人又は検察官です。
特定受遣者や、被相続人に対する債権者、相続不動産上の抵当権者などの担保権者は利害関係人として相続財産管理人の選任申立ができます。
また、相続財産に不動産がある場合、その不動産に関係がある人も申立ができます。
この点で、県知事や市区町村長からの申立もあります。
相続財産管理人では、特別縁故者の分与制度もあるので、この申立をしようとする人も利害関係人に含まれます。
相続財産管理人と相続財産法人
相続人不存在手続で、相続財産は誰のものかというと、その主体は相続財産法人です。
相続財産管理人は、主体ではありません。
相続不動産の登記をする場合の所有名義は、相続財産法人なのです。この登記は、相続財産である法人名義の附記登記によるとされます。
相続財産に関する裁判を起こすときも、被告になるのは、相続財産管理人ではなく、相続財産法人になるのです。
相続財産管理人は、相続財産法人の法定代理人の立場です。
なお、相続財産管理人の選任には、申立をしてから一定の期間が必要です。相続財産に対して訴訟を起こそうとするときに、時効や保全などの必要性があって、相続財産管理人の選任を待てないときには、特別代理人の選任を申し立てることができます。
特別代理人が選任された後に、相続財産管理人が選任された場合には、特別代理人は解任されることになるでしょう。
相続財産管理人と遺言執行者
相続人が不存在でも、遺言があることは多いです。
その遺言で、遺言執行者が指定されていたり、選任されることもあります。
遺言執行者は相続財産の管理権限を有しています。
相続財産管理人も同じく相続財産の管理権限があります。
両者の関係ですが、相続人不存在手続で、受遣者は相続債権者に劣後することになっているので、相続財産の管理は、遺贈の対象とされた物件も含めて相続財産管理人がすべきとされています。
東京家審昭和47年4月19日。
「遺言執行者は相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する(民法一〇一二条)のであるが、これに対し、相続人不存在手続における相続財産管理人は相続財産の管理(民法九五三条)のみならず相続債務との清算をなす権限(民法九五七条)をも有するのであり、また相続債権者に対する受遺者の関係は相続人不存在手続においては民法九五七条二項九三一条により受遺者は相続債権者に劣後するものであるから、これらの法律関係を考慮するとき、仮りに遺言執行者が指定されていても、相続人不存在手続により相続財産管理人が選任された場合には、遺贈物件も含めて相続財産全体の管理は相続財産管理人においてなすべきものと解するのが相当である。」
このような理由で、遺言執行者としての職務について、相続財産管理人の清算事務終了まで停止する旨の審判が出されています。
相続財産管理人の辞任、改任
相続財産管理人は、一度選任されても、家庭裁判所はいつでも改任できます。
改任されても、不服申立てはできないとされています。
仙台高決昭和34年7月3日。
「家庭裁判所は何時でもその選任した管理人を改任できると定めているけれども、右改任の審判に対して即時抗告をし得る旨の規定はない。」
また、相続財産管理人側から、家庭裁判所に届け出ることで辞任もできます。
このときは、許可もなく辞任できるとされています。辞任後、家庭裁判所は新しい相続財産管理人を選びます。
相続財産管理人の選任の取消
相続財産管理人が選任された後、取り消されることもあります。
これは、選任すべきではなかったことが判明した場合です。
選任直後に、実は相続人がいたような場合に、取り消されることがあります。
この取消審判告知の費用は選任審判を申立てた人の負担となります。
相続人が現れた場合、その相続人は最初から相続財産の主体だったことになります。
相続財産管理人の代理権は、相続人が相続の承認をした時点で消滅するとされます。
相続財産管理人と時効
相続財産管理人が選任されると、6か月間は相続財産に対する時効は完成しません。
時効は停止するとされています(民法160条)。
最判昭和35年9月2日。
「相続財産に関しては相続人が確定し又は管理人の選任せられた時より六ヶ月以内は時効の完成しないことは右民法一六〇条の明定するところであつて、従つて相続人確定又は管理人選任なき限り相続財産に属する権利及び相続財産に対する権利については時効完成はあり得ないのである。それ故相続人確定又は管理人選任前たとえ相続財産たる不動産を十年間所有の意思を以つて平穏且公然、善意無過失に占有したとしてもこれによつて取得時効が完成することはないのであるから、この点に関する原判決の解釈は誤りであるといわねばならない。けれども原判決は本件相続財産につき昭和三一年一二月四日相続財産管理人が選任されたことを認定しており、その後六ケ月内に時効中断の事由のあつたことは上告人の何ら主張立証していないのであるからその後六ヶ月を経過した昭和三二年六月四日取得時効完成したものと認むべきである。」
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